ある日の一班より。お花見編




■みやさんバージョン■

「それで各班のローテーションの確認は済んだのか」
「具体的な人数の確認は間もなく終わる。後は微調整をするだけで良いだろう」
「今日の偵察班の報告はまだか?」
「間もなく戻ってくる。候補地を絞り込めそうだな」
「ああ、いよいよだな!」
「おう!」

「…アンドレ、なんだって兵舎の食堂が前線基地の司令部みたいになってるんだ?」
「えーーと、それは…」
「なんだ?はっきり言わんか!」
「つまりあいつらは『花見』の宴会幹事で…。あれはその準備風景と言うわけだ、オスカル」
「はっ花見ぃ〜!?」
「そう」
「な−−にを考えてるんだっこの非常時に!だいたい私になんの断りもなしに!」
「怒るなよ。あいつらだってまだ若いんだし、それにそろって彼女もいない寂しい連中なんだから。こんな時ぐらい浮かれるのも大目に見てやってくれ」
「おまえ、ずいぶんと物分りが良いじゃないか、アンドレ」
「そりゃあ、俺には素晴らしく美しい恋人がいて、幸福の絶頂だし。鷹揚にもなれるさ」
「アンドレ」

「なにそんなとこでいちゃついてんだよアンドレ!隊長も場所をわきまえて下さいよっ!」
「ア、アラン!」×2
「おっ、お前たちこそ何をやってるんだっ!衛兵隊は幼稚園ではないぞ!お花見なんぞと浮かれてる場合か、ばか者っ!」
「えー?隊長、参加してくれないのぉーー?」
「そうそう、具体的な日にちが決まったら、招待しようって、皆楽しみにしてたんすよ」
「わたしを?」
「当たり前じゃないですか!隊長と花の下で一杯やりたくて、皆で頑張って企画したんですから」
「花の下で一杯…」
「…おい、オスカル」
「アラン!現在の状況を報告しろ!フランソワ、地図を出せ!ラサール、人数の確認を急げ!」
「オスカルおまえねぇ!」
「アンドレ!ジャルジェ家のワインの在庫を調べておけ、それからばあやへつまみの準備を頼んでおけ!」
「やったぁ〜!!」
「さあ!諸君、選びたまえ!昼間にするか、それとも夜桜と洒落込むか!」
「我々はあなたに付いてゆきます!」
「隊長!」×全員

「なにをやってるんだか…。ああ、おばあちゃんの怒り狂う顔が目に浮かぶ…」


■郁バージョン■

「た、た、た」
「どうした?ジャン」
「大変です!隊長!」
「落ち着け」
「これが落ち着いていられますか!」
「好みの娘でもいたか?うん?」
「確保してあった花見の場所、根こそぎ移動させられてしまいましたっ」
「なっ!場所取りしてあったのはないか?」
「アランが当番だったんです。でもアランってばパリ娘に目がくらんで」
「持ち場を離れたワケだな」
「そうです」
「で、わたしたちの場所を奪ったふととぎ者の正体は?」
「そ、それがブイエ家の紋章が入った天幕がはられておりますが」
「ぬ、ぬわぁに!ブイエとな?」
「はい、すでに宴はたけなわで飲めや歌えやのドンチャン騒ぎです」
「う〜む、けしからん。アンドレ!アンドレはおるか?」
「なんだ。オスカル。騒々しいぞ」
「話は聞いたな。剣を持て。それじゃない!父上からいただいた青獅子の紋章がついたヤツだ。それからピストルも」
「オスカル。お前、酒が絡むとすさまじいな」
「何か言ったか?」
「い〜え、滅相もございません」

ブイエ将軍の身の心配を本気でするアンドレだった。

隊長によって強制的に武装させられた兵士達が終結した。
「では諸君、行こう!いざ花見へ」
「しかしブイエ将軍が」
「案ずるな。わたしが練りに練った奇襲作戦がある」
「さ〜すが隊長」
「ふっふっふ。知能犯と呼んでくれ」
「オ〜ス〜カ〜ル〜」
「おお!さすがわたしのアンドレだ。ちょっとでかいが似合っているぞ。そのオダリスク風のドレス」
「かかしの気分だ」
「はっはっは、細かいことは気にするな。わたし達のために協力してくれるな?」
「俺は気がすすまん」
「わたしが頼んでも?」
「う・・・・」
オスカルのうる目に弱いアンドレ。それを知っているオスカルは奥義『うる目』を使う。使う。
アンドレの知能犯の出所は、やはり主人からだった?
かくして、お色気作戦でブイエを骨抜きにし、無事、奇襲は成功した。

衛兵隊ご一同様、桜の木の下で盛り上がりまくり!
やっとの思いでブイエから逃げ出したアンドレも軍服に着替えて宴にくわわった。
春の夜は、ちゃかぽこと深けていった。

■さわらびさんバージョン■

「全員酔いつぶれるとは、一体どれくらい飲んだんだ?」
「それはこっちが聞きたいわ。オスカルさまが楽しいことがある、とおっしゃるから
喜んで来てみたら、兵隊さんの花見だなんて…!」
「まあ、女っ気があんまりないのもかわいそうだというオスカルの配慮だったんだよ。」
「でも、結局私たちって片づけに呼ばれたようなもんじゃない?」
「そうよ、みんな大声で歌って騒いで、ぶっ倒れて…!」
「明日、きっとオスカルから金一封出させるから、勘弁してやってくれないか?」
「しかたがないわね。さっさと片づけてお屋敷へ帰りましょう。アンドレはオスカルさまをお願いね。」
「ああ、悪いけど先に帰るよ。これ、辻馬車代に使ってくれ。」
「あら、ありがとう。」

「う…ん、アンドレ、もう飲めない…。」
「気がついたか?さあ、帰るぞ、オスカル。」
「あ…あ。みんなは?」
「その辺に寝ている。おまえはそんなわけにはいかないから、これから帰るぞ。」
「すま…ない…な。」
「いや、楽しかったか?」
「ああ、とても。」
「それなら上等だ。」

「あ…れ?隊長は?」
「アンドレもいない…。」
「隊長が呼んでくれたおねーさん達もいないぞ。」
「飲んだはずの酒瓶もグラスもないや。」
「夢だったのかなあ?」
「まさか、全員で同じ夢は見ないだろう。」
「そっか…。そうだね。」
「楽しかったな。隊長もご機嫌だったし…。」
「よし、次は真夏のビアガーデンだ!」

■再び みやさんバージョン■

「アンドレ…水、みーずっ」
「はいはい、この酔っ払い!おまえ、こんなになるまで飲んじゃって…。明日ちゃんと勤務につけるのか?」
「アンロレっ!ばーかーにすんなっ!これっくらい、チョロイ!」
「はーっ!だめだなこりゃ。…ッたく、酷い夜だった!ブイエ将軍にキスは迫られるは、オスカルはこのザマだは。おかげで俺は少っしも酔えなかったんだぞ!分かっているのかおまえ!」
「とかなんとか言ってぇーなーにワインボトル抱えてきてるんだおまえ」
「当然ここで俺のお花見をやらせてもらうのさ、オスカル」
「花は?自分の鼻でも見ながら飲むのか?」
「花ならここに。ベルサイユの氷の薔薇が俺だけのために咲いてるじゃないか。そうだろ?オスカル」
「アンドレ」
「今宵の薔薇は、美酒で磨かれていよいよ艶やかだ。綺麗だよ」
「こーんな顔でいいのなら好きなだけ眺めて良いぞ、アンドレ」
「そう?それじゃお言葉に甘えさせてもらうけど、もっと傍によってくれないと。良く見えないだろ、オスカル」
「こうか?」
「そう、もうちょっと」
「こう?……!!」

■ジミさんバージョン■

「アンドレ おまえ本当に一人で呑んでいるのだな!?」
「ああ!いい気分だ。美しい薔薇が目の前にあって 庭からは木の葉のさわさわする音が聞こえてくる」
「アンロレ!わたしはもう限界だ」
「オスカル!俺もだ!もう待てない」
「うん……眠い…」
「眠い?」
「ああ、もの凄く眠い!」
「オスカル!!!オースカール!!」
アンドレ心の声(だめだ完全に爆睡状態だ 寝室に運ぶか)
(まーオスカル おまえの寝顔を見ながらの酒もいいもんだ。ちょっぴり寂しいけどな)
こうして二人の夜は 清く正しく更けていくのであった。


お・し・ま・い


『あとがき』
皆さんのお陰で楽しい作品ができました。季節はずれでごめんね。












                                                                                                             

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